「君は満月みたいな人だ。満月は人を惑わせるというだろう?君の魅力は私を惑わせるんだ」 ミゼルは苦しそうにいう男に目を丸くした。 魅力?この私に?こんな痩せ細った私にどんな魅力があるというの? からかわれてるのだと思ったミゼルは、傍にあった椅子に腰掛け男に冷めた目線を向ける。 「満月はいずれ欠けていくものよ。もし惑わされているなら一時的なものでしょう」 そう言いながら、ミゼルは足を組む。その時長いスカートの裾から見えた長いすらりとした足に男の視線は釘付けになったことに気がついてはいない。 「そもそも私にあなたのような人を惑わすほどの魅力はないわ。ジュリア妃のようにスタイルがいいわけでもないし、セリーヌ姫のように陽気で明るいわけでもないわ。ただ歌うことしか能がないつまらない女。あなたが言っていた通り卑しい魔女よ」 体を傾けて机に頬杖をつきながら、男を見上げる。その様子がえもいわれぬ色気を醸し出し、一層男の心を惑わすということにも全く気づかずに。 「君がつまらないなんてばかげている!今までの私は間違っていた。君が魔女だなんて!」 男─ セレスティア公主ゼファード ─は心の中で舌打ちした。 冷めた態度を崩さないミゼルを少し苛立たしげにゼファードは見つめる。
向けられる視線にだんだんと居心地の悪さを覚えたミゼルは、意味もなく足を組みかえ気を紛らわせた。 「あなたはセイレーンの唄に惑わされただけよ。陸にお帰りなさい。哀れな船乗りさん」 ミゼルはもう話は終わったとばかりに立ち上がり男に背を向けると、帰り支度をするためおろしていた髪を結い上げようと持ち上げる。
ミゼルはふいに腕をつかまれ振り向かされる。
「気をつけろ。もう理性が限界だ」
ミゼルが声をあげるより早くその唇は塞がれていた。
────口説きバトンキーワード2 『月』 拍手ありがとうございます! 口説きバトンでラブシーン?書いてみようシリーズ。現在3種類です。 表に出すのは恥ずかしいのでこんなところで公開です(笑) ちょっと調子に乗って他のより長いです。 続きは全年齢向けサイトなので掲載できません。というか、この話は既に年齢制限入りそうですが。 |