拍手ありがとうございます! 口説きバトン月編

「君は満月みたいな人だ。満月は人を惑わせるというだろう?君の魅力は私を惑わせるんだ」

ミゼルは苦しそうにいう男に目を丸くした。

魅力?この私に?こんな痩せ細った私にどんな魅力があるというの?
散々、歌で年老いた領主を骨抜きにした魔女と蔑んできたくせに・・・・・・。

からかわれてるのだと思ったミゼルは、傍にあった椅子に腰掛け男に冷めた目線を向ける。

「満月はいずれ欠けていくものよ。もし惑わされているなら一時的なものでしょう」

そう言いながら、ミゼルは足を組む。その時長いスカートの裾から見えた長いすらりとした足に男の視線は釘付けになったことに気がついてはいない。

「そもそも私にあなたのような人を惑わすほどの魅力はないわ。ジュリア妃のようにスタイルがいいわけでもないし、セリーヌ姫のように陽気で明るいわけでもないわ。ただ歌うことしか能がないつまらない女。あなたが言っていた通り卑しい魔女よ」

体を傾けて机に頬杖をつきながら、男を見上げる。その様子がえもいわれぬ色気を醸し出し、一層男の心を惑わすということにも全く気づかずに。

「君がつまらないなんてばかげている!今までの私は間違っていた。君が魔女だなんて!」

男─ セレスティア公主ゼファード ─は心の中で舌打ちした。
なんてことだ。この娘は自分がどんなに男を惹きつけるかを全くわかっていない!
初めて紹介された時から、ゼファードは周りにいる着飾られただけの女達にはないミゼルの聡明さと美しさに、完全に心奪われていた。
そんな事実は、今まで社交界で浮名を流してきた自分には信じられないことだった。
だから魔女と蔑み、遠ざけた。今まで作り上げた自分が崩れてしまわないように。

冷めた態度を崩さないミゼルを少し苛立たしげにゼファードは見つめる。
白い綿毛のように広がる長い髪。顔はまるで人形のように整っていて、唇はふっくらと赤く、そこから紡ぎだされる歌声はたった今人々を酔いしれさせたばかり。
垣間見えるすらりと伸びた手足と胸元は雪のように白い肌をしている。その肌に紅い花を咲かせてみたらどんなに映えることだろう。
なにより惹きつけられるのは、その赤い瞳だ。ルビーのように鋭い輝きを放つ瞳は、髪と同じ白く長い長いまつげに縁取られ、より一層輝いて見える。
常に物憂げに人を見るその瞳を炎のように燃え上がらせることができたら、どんなに刺激的だろうか。
ゼファードの視線が次第に熱を帯びたものになっていく。

 

向けられる視線にだんだんと居心地の悪さを覚えたミゼルは、意味もなく足を組みかえ気を紛らわせた。
歌姫となった今でこそちやほやされているが、それは領主の寵を受けている歌姫だからだ。そうミゼルは思い込んでいる。
幼少の頃、虐げられて育てられた経験が、ミゼルに自分を卑下させ続けているのだ。

「あなたはセイレーンの唄に惑わされただけよ。陸にお帰りなさい。哀れな船乗りさん」

ミゼルはもう話は終わったとばかりに立ち上がり男に背を向けると、帰り支度をするためおろしていた髪を結い上げようと持ち上げる。
ふんわりと背中に広がっていた髪があがり、白いうなじがゼファードの目にとびこんだ。

 

ミゼルはふいに腕をつかまれ振り向かされる。
いつの間にそんなに近づいていたのか、ゼファードの強張った顔が目の前にあった。

 

「気をつけろ。もう理性が限界だ」

 

ミゼルが声をあげるより早くその唇は塞がれていた。

 

────口説きバトンキーワード2 『月』
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口説きバトンでラブシーン?書いてみようシリーズ。現在3種類です。
表に出すのは恥ずかしいのでこんなところで公開です(笑)
ちょっと調子に乗って他のより長いです。

続きは全年齢向けサイトなので掲載できません。というか、この話は既に年齢制限入りそうですが。
既存の自キャラ名使ってますが、本編とは関係あったりなかったり。あったらミゼル知ってる人びびりますよね・・・(笑)






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